NEWS

周年事業
2021.08.04
【連載】第六回|100周年企業に見る「創業(創立)」と「設立」の関係

設立登記の手続きが完了日が「設立日」となるのに対して、「創業(創立)日」には制度的な取り決めがありません。
事業が軌道に乗ったタイミングで会社を設立するケースもあれば、とりあえず会社を立ち上げ、環境が整ったところで事業をスタート(創業・創立)させることもあるからです。では100年前の状況はどうだったのでしょうか?

東京都立広尾図書館に所蔵されている『東京商工リサーチ社のCD・Eyes50万社データ2021年5月版』によると100年前の1921年に創業された会社は744社あり、設立された会社は75社ありました。
このうち、創業も設立も1921年だった会社は33社でした(下図表を参照ください)。

 

5000人以上の従業員を抱える企業5社(法人格省略、従業員の多い順)

1921年創業2社:ジェイテクト/大塚製薬
1921年設立2社:小松製作所/名古屋鉄道
1921年創業&設立1社:三菱電機

1000人以上の従業員を抱える企業は16社(同)

1921年創業9社:大塚製薬工場/城北信用金庫/トピー工業/広島アルミニウム工業
        タカラベルベット/イズミヤ/カクヤスグループ/江崎グリコ/シマノ
1921年設立1社:日産化学
1921年創業&設立4社:テルモ/神奈川中央交通/みちのく銀行/尼崎信用金庫

 

1921年に見られる特殊な状況は前年(1920年3月15日)の株式市場大暴落が影響?

最近の傾向としては、創業(創立)日と設立日が一緒のケースが増えていますが、100年前には創業(創立)が先行しているケースが圧倒的に多いようです。
特に前年に恐慌ともいうべき経済の大変動を経験した1921年は特徴的な傾向を示しました。
ニューヨーク証券取引所に端を発した株式市場の大暴落が、瞬く間に世界中に伝播し日本国内にも大型倒産(横浜の生糸商・茂木商店とその機関銀行の七十四銀行など)が相次ぎ健全な経済状態には程遠く、混乱の中、新規事業を模索する状況であったと推察されます。
その一方で設立を見送る傾向が顕著となりました。

 

1951年に件数増大、1981年を境に設立が創業(創設)を大幅に上回る

上の図表を見ると、日本経済が1951年あたりを境に急成長していることがよくわかります。
そして、その30年後の1981年には設立が創業(創立)を大きく上回るようになりました。
これまで社内展開してきた事業を独立させる、あるいは本格的に法人活動に切り替える。
そうした動きが顕在化してきたのでしょう。

 

過去5年間に『広報会議(周年イヤーの迎え方)』掲載された100周年企業他(掲載順)

1916年創業「霧島酒造」/1916年創立「日本精工」
1917年創立「ニコン」/1917年創業「森永乳業」
1918年創業「ニチバン」/1918年設立「電気通信大学」/1918年創業「象印マホービン」
1918年創立「ホーチキ」1918年創立「帝人」/1918年創業「ハナマルキ」
1919年創立「小林製薬」/1919年創業「シチズン時計」/1919年創業「キユーピー」
1919年創立「住友商事」1919年創立「日本ガイシ」/1919年創立「河村電器産業」
1919年創立「セイバン」/1919年創業「オリンパス」
1920年創業「敷島製パン」/1920年創業「マルマン」
1921年創業「サクラクレパス」